主任司祭「千原通明(ちはらみちあき)」(写真左)
助任司祭「楠宗真(くすのきむねまさ)」(写真右)

 姜先生は、講演の中で、これからの幼児教育は、視覚中心のITやスマホが取りまく環境の中で、身体感覚を大切に養うようにしてほしいと訴えられました。また、本当の自立は子どもの存在そのものが承認されて初めて可能になる、すなわち「自分はここに居ていいのだ」と本人が心から感じるようにすることが大切である、と指摘され、ここでも身体感覚、特に声(聴覚)を大切にした関わりを持ってほしいと言われました。

 姜先生の政治学者としての洞察とコメントは大変鋭いものがありますが、語り口はいたって穏やか。穏やかなのは語り口だけではなく、じつは彼の人間への限りないあたたかな眼差しがあるからこその優しさであると思っています。その優しさの背景には、彼が在日二世として生きてきたこと、大切な息子さんを自死でなくされたことなどの、大変つらい経験があったからこそと思います。そして、クリスチャンとして、神様の限りない愛を体験されているからこそとも言えるでしょう。

 講演会のあった日、わたしはモンテッソーリの東北地区研修会に出席のため福島に新幹線で行くことにしていました。ちょうど姜先生も同じ新幹線にお乗りになると聞いておりましたので、ホームで先生をお待ちしていました。先生がお一人でホームを歩いてこられたので、また挨拶をさせていただき、先生の乗られる先頭車両までいっしょに歩きながら話をすることができました。長野県の伊那谷に住まわれている詩人の加島氏はご高齢だけれどもお元気だとのこと、わたしも長野県出身であること、司祭として転勤族であることなどなど。
最後に先生の方からまた機会がありましたら会いましょうと握手をしてくださいました。わたしは大変感激して、ますます姜先生のファンになりました。

 10月に開かれた東北地区私立幼稚園教員研修大会の記念講演会は姜尚中(カン・サンジュン)先生が講師で「子どもとともに未来をきずく」との演題でお話しくださいました。

 姜先生のことは、以前NHKのドキュメンタリーで詩人の加島祥造氏と対談されているのを見てから興味を持ち、その後大震災をテーマにして書かれた小説『心』を読んで深く感銘を受けていました。また、カトリックの雑誌『福音宣教』にも今年2回にわたって「苦難の意味」について書かれ、大変深く共鳴していました。

 そこで、研修大会の実行委員長さんにお願いして、講演会場にお着きになった姜先生に個人的な挨拶をさせていただきました。

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姜尚中先生のこと
(H27.11)主任司祭 千原通明